+A cold day+





「寒い!さむーい!さむっ!!……なぁ寒いんだけど。」

ソファーの上でクッションを握りしめ足をバタバタさせながらデュオは

隣で静かに読書を決め込んでいる相手に訴える。

初めは無視を決め込んでいたヒイロも流石に読書に集中出来ないのか、

一度本を閉じデュオに向き直った。

「そんなに寒いなら何か羽織ればいいだろう?」

「そーゆー問題じゃねーんだよ!着ても寒いもんは寒いんだよ!」

「だったら運動でもしたらどうだ?」

「……疲れるだろ。」

デュオはヒイロの提案をことごとく却下していく。

ヒイロは呆れた表情を隠す事無くさらに続ける。

「まだ11月だぞ。今からそんな事でどうする?」

「うるせー、そん時はそん時なの!暖房入れようぜ、な?」

デュオはクッションを横に置きヒイロに手を合わせお願いのポーズを取る。

「まだ早いだろう。それに俺は寒くないが……。」

「そりゃヒイロさんは戦時中は冬でもタンクトップにスパッツだったもんなぁ。
 
 体温も血圧も心拍数も寿命も自由自在だもんな!」

「流石に寿命は無理だ。」

「うっせー、わかって言ってんだよ!」

「心頭滅却すれば火もまた涼しと同じ感覚だ。やってみろ。」

「……無理に決まってんだろ。ケンカ売ってんのか?」

デュオはそう言うとクッションを抱き締めガクッとうな垂れた。

何故そこまで寒いのだろうか?とヒイロは思う。

戦時中はデュオもこれくらいの寒さは何も言っていなかったはずだ。

寒さを気にするくらいには平和になったということなのだろうか。

よくよく振り返ってみればデュオは夏でも黒い服を纏い肌をあまり出していなかった。

今もヒイロはシャツ一枚を羽織ってるだけだが、デュオはシャツの上にセーターを着ている。

そして寒いのだろうか、体を縮こまらせて手を擦り合わせている。

「何で暖房入れたらダメなんだよ?」

「だからまだ早いだろう?それに……。」

「それに?」

デュオはヒイロの方に身を乗り出して続きを待つ。

「光熱費がバカにならない。」

その言葉を聞いてデュオはガクっと肩を落とす。

「んなもんお前がデータちょろっと改ざんすればいいだけじゃねーか。」

「デュオ、それは違法だ。」

「そんなとこだけ常識人ぶるなっつーの!」

まったく、非常識なオマエに言われたくないぜ、とデュオはその後に続けた。

そして、はぁーと盛大な溜息を吐いた後そのまますくっと立ち上がる。

「デュオ?」

「もういいわかった。」

覚えてろよとボソッと呟いて、そのまま立ち去ろうとしたデュオにヒイロは声を掛ける。

「どこに行く?」

「……風呂、入ってくる。」

バスルームへと消えていくデュオ。

「可笑しな奴だな。」

ヒイロはいまいちデュオの突然の行動と言動に理解出来なかったが、

とりあえずこの話は終わったとばかりに再び本を開いた。










その日の夜。

ヒイロよりも先に寝室に入ったデュオは珍しく自分のベッドに入っていた。

余程先程のやり取りに腹を立てたのだろうか。

少し遅れてヒイロが寝室に入ってきた時もデュオは寝たふりを決め込んでいた。

いつも同じベッドに寝ているはずのデュオが自分のベッドにいない事を少し不思議に思いながら

ヒイロはデュオの方に歩いて行く。

そして布団を捲ろうとしたがデュオの声に遮られた。

「お前のベッドはあっちだろ?」

ヒイロに背を向けた状態のままデュオは素気なく言い放つ。

いつも入ってくるのはお前のほうだろうとヒイロは内心思いながらもう一度布団を捲る。

それでデュオはヒイロの方に向き直る。

「オレと一緒に寝たらお前暑いんだろ?」

だったら自分のベッドで寝ろよと続けてデュオはヒイロを拒む。

「デュオ……。」

ヒイロはどうしたものかと考えるがデュオが怒っているのだけは何となく伝わってきて

名前を呼ぶだけに留った。

布団に力を込めればさらにデュオが続ける。

「それと、当分えっちなしだからな!」

「なっ!!」

「だってくっついたら暑いんだろお前!」

デュオがニヤっと笑って起き上がる。

「そんな事ない。」

「だってさっき言っただろ。」

「俺は寒くはないと言ったんだ。誰も暑いとは言ってない。」

「それでも!当分しないからな!」

クルっとヒイロに背を向けてデュオは布団にくるまる。

「説明しろ。」

「寒いから。」

「何?」

「だ・か・ら、温かくなるまでしないって言ったの。」

そしてもう一度ガバっと起き上がる。

「お前は寒くなくてもオレは寒いの!暖房つけてくれなきゃしないからな!」

エッチがしたけりゃ暖房を入れろと言う交換条件と言うところか……。

「嫌ならこのままな!」

さぁどうする?と言った顔でデュオがヒイロをじっと見る。

「決まっている。」

そう言うと布団の中に入りデュオを抱きしめる。

答えなど言わなくてもわかっているだろうに。

ヒイロは結局のところデュオの甘いのだ。

してやったりと言う顔をしてにっこり微笑む顔にヒイロは顔を寄せていった。










翌日。

少し厚めのシャツだけを身に纏ったデュオは、暖房の快適さに鼻歌まじりだ。

「やっぱり部屋が温かくて薄着なのが一番だよな〜。」

そう言いながら食事の準備を始める。

なるべく後ろにいる相手を見ないように努めるがどうしてもそれは視界に入ってしまう。

暖房が入って暑いのはわかるがタンクトップにスパッツ姿で新聞を読のはやめてほしい。

そう思っていても暖房が入っている手前言えないデュオだった。

「こーゆー所が非常識なんだよ……。」

「何か言ったか?」

「いや、別に。」

ちゃっかり耳だけはこっちに向けてやんの。

折角快適になったと思ったのにまた新たな問題が発覚だ。

次はヒイロのこの格好をどうやってやめさせようか考えるデュオだった。











あとがき
久しの更新です。何ヶ月ぶりでしょうか(汗)
この話はどこの家庭でもあることではないかなと思うのは私だけ?
どっちかっていうと私はデュオ派です。寒いの苦手です(>_<)
なので暖房がないと生きていけません。冷房はなくても大丈夫ですが……。
まぁギャグチックな感じを楽しんで頂ければ!と思います。←どの辺がギャグだよ。

2007.11.17     葵